収録曲目
シューマン
1.ロマンス 嬰ヘ長調 作品28の2
2.交響的練習曲 作品13
3.幻想曲 ハ長調 作品17
仲道郁代(ピアノ/スタインウェイ) ■プロデューサー:フィリップ・トラウゴット ■レコーディング・エンジニア:マーティン・キストナー、フィリップ・ネーデル(ベルリンb-sharp)
- 録音 2017年4月18日~20日、ベルリン、イエス・キリスト教会(DSDレコーディング)
- レーベル RCA Red Seal
- 品番 SICC-19008
- 定価 ¥3,000+税
- 発売日 2017年09月27日
- 発売元 (株)ソニー・ミュージックレーベルズ
仲道の「音楽の故郷」、シューマンへの帰還。
■シューマン・ワールドへの傾倒
仲道郁代がレパートリーの中心に置いているのは、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマン、ショパンという4人の作曲家のピアノ作品。デビュー以降、この4人の作曲家を軸にして演奏活動とレコーディングを行なってきました。この中でシューマンについては、1987年のデビュー・コンサートおよびデビュー・アルバムに含まれていたのが大作ピアノ・ソナタ第3番「グランド・ソナタ」であり、デビュー直後の数年間に仲道がピアニストとしての最初の評価を勝ち取ったのもシューマンのピアノ曲の数々だったこともあり、仲道の「音楽の故郷」とでもいうべき存在です。レコーディングでも、デビュー・アルバムに続き、2枚目で「謝肉祭」(1988年6月発売)、3枚目で「子供の情景&クライスレリアーナ」(1989年4月発売)と、立て続けにシューマン作品を録音しており、当時の熱中ぶりが伺えます。その後、フロール指揮フィルハーモニア管との共演でピアノ協奏曲(1994年9月発売)、1998年にはニューヨークでの初録音でシューマンを含むドイツ・ロマン派の小品を録音(「ロマンティック・メロディ」、1999年4月発売)し、シューマン・ワールドへの傾倒を示しています。
■2017年、30年を経ての「音楽の故郷」への回帰
そして2017年4月、ベルリンでの3日間のレコーディング・セッション。シューマン作品が内包するロマンティシズムを情熱的に表出するピアニストとして高く評価されてきた仲道が、デビュー30年を機についに自らの「音楽の故郷」ともいうべきシューマンに戻ってきました。記念すべきアルバムのために選ばれたのは、仲道が長年録音を切望しながら果たせなかった「幻想曲」と「交響的練習曲」という大作2曲に、美しい佳品「ロマンス嬰ヘ長調」。極限まで拡大した破格の音楽構造の中に深いロマンティシズムが息づく「幻想曲」、主題と12の変奏という枠組みの中で多彩な技巧が追求される「交響的練習曲」と、いずれもシューマンが途方もない音楽的構想を注ぎ込んだ傑作です。
■最高の環境で万全を期してレコーディング
レコーディングは、ベルリンのダーレム地区にあるイエス・キリスト教会において、3日間のセッションでじっくりと時間をかけて行なわれました。1932年に建立されたこの教会は、第2次大戦後からはドイツ・グラモフォンをはじめとするさまざまなレコード会社によるレコード録音、ベルリンRIASなどの放送局による放送録音のセッションが頻繁に行なわれるようになり、名盤・名録音として知られるフルトヴェングラー/ベルリン・フィルによるシューベルト「ザ・グレイト」やシューマンの交響曲第4番もここで制作されました。そして何といってもステレオ時代にカラヤンとベルリン・フィルが大量の録音を行なったことでレコード・ファンにもお馴染みの録音会場となりました。高い天井を持つ大きな空間を備えつつも、決して過剰な響きがつかず、ピアノ・ソロから大編成のオーケストラまで抜けの良い明晰なバランスで収録することが出来ます。1998年以来一貫して仲道のプロデュースを手掛けてきたフィリップ・トラウゴットが今回もプロデューサーをつとめ、ベルリンに本拠を置くb-sharpスタジオのテクノロジーをフルに生かして、深みのある美しい響きの中で、仲道郁代が30年を経て辿りついた深いファンタジーの世界を余すところなく収録しています。