仲道郁代
日本で最も求められ続けているピアニストの一人。
音楽から神聖さ、親密さを見出してパーソナルなピアノの音として立ち上らせる独特の演奏スタイルは多くの共感を得ている。
近年の活動として最も注目されるのが、2018年に開始され、2027年までの10年に及ぶ「The Road to 2027リサイタル・シリーズ」である。彼女自身の演奏哲学が反映された全20のプログラムからなり、日本全国で開催され好評を博している。2021年秋に行われた当シリーズの「幻想曲の模様~心のかけらの万華鏡」公演(東京文化会館)は、令和3年度文化庁芸術祭「大賞」を受賞した。
仲道はデビュー以来35年以上にわたって常に高い人気を保ち続けている稀有な存在である。日本では全国各地で彼女のコンサートを望む声を受け続け、延べ2500回を超えるリサイタルを実施してきた。十代の頃にアメリカ・ミシガン州に住み、またミュンヘンで学んだことが彼女の音楽観に深い影響を与えているが、細やかさや繊細さ、他者との深い共感性を同時に持ち合わせているところが、彼女のピアノの魅力の一つとなっている。
オーケストラとの共演も多く、サラステ指揮フィンランド放送交響楽団、マゼール指揮ピッツバーグ交響楽団、ズッカーマン指揮イギリス室内管弦楽団 (ECO)、フリューベック・デ・ブルゴス指揮ベルリン放送交響楽団、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団、バイエルン放送交響楽団、フィルハーモニア管弦楽団などのソリストとして迎えられ、高い評価を得た。
室内楽も好み、ストルツマン、ハーゲン弦楽四重奏団、ブランディス弦楽四重奏団、ベルリン・フィル八重奏団等と日本ツアーを行い、いずれも好評を博した。
CD はソニー・ミュージックレーベルズと専属契約を結び、レコード・アカデミー賞受賞 CD を含む「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集」や「モーツァルト:ピアノ・ソナタ集」、「シューマン:ファンタジー」、「ドビュッシーの見たもの」、古楽器での録音など、60枚を超えるディスクをリリースしている。
執筆にも定評があり、新聞、雑誌への寄稿のほか、著書には『ステージの光の中から~仲道郁代の音楽学校』(音楽之友社)、『DVD・BOOK 至福のピアノ 弾く・聴く・楽しむ』(講談社)、『ピアノの名器と名曲』『ショパン 鍵盤のミステリー』『ベートーヴェン 鍵盤の宇宙』(ナツメ社)、『ピアニストはおもしろい』(春秋社) がある。
仲道は演奏活動の初期より一貫して社会的な活動にも関心を持ち続けてきた。特に東日本大震災で被災した宮城県七ヶ浜町における子供達へのアウトリーチ活動は町との繋がりを深めて継続して行われており、NHK「おはよう日本」「ニュースウオッチ9」等でも取り上げられ反響を呼んだ。2018年には自身が代表となる一般社団法人音楽がヒラク未来を設立。これまでの活動が評価され、令和3年度文化庁長官表彰を受けた。
日本音楽コンクール第 1 位、ジュネーヴ国際音楽コンクール最高位、メンデルスゾーン・コンクール第1 位メンデルスゾーン賞、エリザベート王妃国際音楽コンクール第 5 位他、受賞歴多数。
一般社団法人音楽がヒラク未来代表理事、一般財団法人地域創造理事、桐朋学園大学教授、大阪音楽大学 特任教授。
仲道郁代 オフィシャルウェブサイト
(2022年4月現在)
株式会社 ジャパン・アーツ(担当:芹澤・西田・塚本)
〒150-8905 渋⾕区渋⾕2-1-6
TEL : 03-3499-8100
serizawa@japanarts.co.jp
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tsukamoto@japanarts.co.jp
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ライフワークの
ベートーヴェン
仲道はこれまで、6度にわたるベートーヴェン全曲チクルスを実施してきた。とりわけ2002年から2006年にかけて行われた『諸井誠&仲道郁代 ベートーヴェン全32曲のピアノ・ソナタを語り、聴く会』は、仲道のベートーヴェン演奏を広く印象付けるものとなった。
仲道は自身の音楽の核にはつねにベートーヴェンがあると語っているが、現在最も力を入れて取り組む「The Road to 2027リサイタル・シリーズ」の[春のシリーズ]においても、ベートーヴェンを軸に自身の演奏哲学を体系的に示した10年にわたるプログラムを組み上げている。
また横浜みなとみらいホール(2020年〜2027年)、京都コンサートホール(2022年〜2028年)でのソナタの全曲演奏会も並行して行われているほか、ピアノを含む室内楽全曲を網羅するコンサートシリーズもスタートさせた。
近年はオリジナル楽器での研究の成果も際立っており、新しいベートーヴェン像が打ち出されていることも特筆すべきことである。
録音ではソニー・ミュージックレーベルズより、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲をリリース。このうち『最後の三大ソナタ 第30番・第31番・第32番』はレコード・アカデミー賞を受賞した。さらにパーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンによるピアノ協奏曲全曲もリリースしている。
仲道所有のベートーヴェン ピアノ・ソナタの楽譜。
フォルテピアノの研究
仲道郁代はモダンピアノのピアニストでありながらフォルテピアノにも造詣が深いことでも知られている。J.A. シュタイン(アメリカ・ツッカーマン社製、山本宣夫改造、1790年モデル)、プレイエル(パリ、1842年製、オリジナル)、ブロードウッド(ロンドン、1816年製、山本宣夫修復)等のフォルテピアノを所有し、研究を行なっている。
感覚と知識に裏付けられたアプローチがモダンピアノ演奏へと結実しており、音楽学者からの評価も高い。またフォルテピアノの研究により、特にベートーヴェンとショパンの演奏に深みと独自性が加えられているとの見方もある。
録音では、プレイエルを用いたショパンのピアノ協奏曲第1番、第2番(有田正広指揮、クラシカル・プレイヤーズ東京)や、プレイエルとスタインウェイと2つの楽器で弾き分けた『ショパン:ワルツ』がある。
手前にブロードウッド、奥にシュタインが並べられ、中央にYAMAHA CFXが置かれた舞台。仲道はモダン・ピアノとフォルテピアノを並べて弾き分けるコンサートもたびたび行っている。
音楽を社会へとひらく試み
仲道は演奏活動を開始した頃より一貫して、音楽と社会とのつながりに関心を持ち続けてきた。10 代の頃にアメリカ・ミシガン州に暮らしてプラグマティズムの影響を受けたこと、またドイツへの留学で⼈と⾳楽の関わりを学んだことが背景にあると本人は語っている。
社会のなかでのクラシック⾳楽のあり⽅への問いは常に演奏活動にあり、「仲道郁代の音楽学校」や「不思議ボール」などのさまざまな企画を生み出す原動力ともなった。また2012 年からは、東日本大震災で被災した宮城県七ヶ浜町での復興⽀援の⾳楽アウトリーチをはじめ、
⼩学⽣を対象とした⾳楽ワークショップを全国で⾏う等、⼦供たちへの⾳楽の届け⽅の研究にも尽⼒。特に、デビュー間もない頃から親交を結んできた七ヶ浜町では、長年のコンサート活動や中学生のための芸術鑑賞事業に加え、小学6年生全クラスへのアウトリーチ活動を継続して行うことで町との繋がりを深め、
2018年には「しちがはま文化大使」に任命された。また、アウトリーチ活動はNHK「おはよう日本」「ニュースウオッチ9」等でも取り上げられ反響を呼んだ。
仲道はまた、2016年より全国で開催されたフォーラム「⾳楽がヒラク未来」で芸術監督をつとめるなど⾳楽をいかに社会へひらくかを問う活動も展開してきた。2018 年9⽉にはそれらの活動を後押しするために「⼀般社団法⼈⾳楽がヒラク未来」が設⽴され、代表理事に就任。
これらの長年の活動が評価され、令和3年度文化庁長官表彰を受けた。
七ヶ浜町小学校でのアウトリーチ。